織の着物・帯
御召(おめし)
スーツ感覚で装えるスタイリッシュな着物。 かつて、徳川十一代将軍家斉が好んでお召しになったことから、「御召」と呼ばれるようになりました。
御召の特徴は、あらかじめ精錬した糸を用いて織るため密に織り上がり、やや硬い地風となる点です。逆に普通の縮緬は、織り上げた後の布地を精錬するため、柔らかい風合いとなります。また御召は、強撚糸を織りこんでいるため、丈夫でシワが戻りやすく、着くずれしにくいという美点もあります。当然普段の遊び着として着ていただけますが、デザインによっては、お茶席や食事会などの準礼装の場にも、スーツ感覚で着ていただくことができる着物です。
結城紬(ゆうきつむぎ)
紬の王様とも呼ばれ、近年“ユネスコ無形文化遺産”にも認定された結城紬は、着れば着るほどに風合いが深まり、着心地が良くなります。
手にとれば綿の様に軽く、絹織物でありながら光沢をおさえた素朴で暖かみのある風合いは、着る人の真の魅力、深さを見事なまでに引き出します。
しかも、時を経るほどにその真価が生まれる結城紬は、まさに日本の文化の結晶といえます。
大島紬
奄美大島(鹿児島県)を本場生産地(発祥の地)とする絹織物で、約1,300年の歴史を誇る、日本の伝統的工芸品です。昭和55年通産省により伝統的工芸品に指定されました。
シャリンバイ(バラ科の植物)に含まれているタンニン酸色素と泥田の中の鉄分(化学反応を起こすことで染色することにより、深く光沢のある黒色に染まる「泥染め」が特徴です。コブラン織り(フランス)、ペルシャ絨毯(トルコ、イラン)と並ぶ世界三大織物としても知られており、着物の格としてはしゃれ着にあたりますが、高級絹織物として、着る人のステータスシンボルの一つにもなっています。
牛首紬
「牛首」という名は、生産地である石川県白山市・白峰の旧地名(牛首村)に由来しています。結城紬、大島紬とならぶ日本三大紬で、石川県指定無形文化財にもなっています。普通では糸が繰り出せないため廃棄される「玉繭(二匹の蚕が共同で一つの繭を作ったもの)」を秘伝の製法で糸として紡ぎ、織り上げた牛首紬は、別名「釘抜き紬」と呼ばれるほどの丈夫さを誇り、そのしなやかな肌触りは多くの着物ファンを魅了しています。
染の着物・帯
ろうけつ染め
ろうを使った染めの方法です。ろうをしみこませた部分が白く染め残る性質を利用します。溶かしたろうを筆にとって布地に模様を描き、染色後にろうを取り除きます。ろうを置いておいたところには基本的に色が入りませんが、ろうがひび割れたところには染料が入るので、独特の染め上がりになります。日本では正倉院宝物に見られるなど、天平時代から見られる伝統的な染色技法となっています。
伊勢型小紋
武士の裃の柄から発展した「江戸小紋」。普段着として着られる小紋の中でも格別に着用幅が広く、カジュアルから略礼装まで様々な場面でお召しいただくことができることから、着物通の方や茶道をされる方を中心に高い人気を集めています。その中でも「伊勢型小紋」は、重要無形文化財にも指定された技術を使用した「伊勢型紙」を用いて染められたものを指します。職人が手彫りした型紙による手染めの作品は、数十年にも及ぶ修行によって磨かれた技術を要し、後継者がいないことからも大変希少なものとなっています。
京友禅
振袖、訪問着などで目にする機会の多い京友禅。もともとは、公家、大商人向けの色柄でした。華やかな色使いで、金箔や金刺繍などで豪華絢爛に仕上げてあるものもあります。下絵の線の上に糊を置き、その中に色を置いていくため、輪郭が白く抜かれていることが特徴です。自然を抽象化した文様を多く柄に取り入れています。
加賀友禅
加賀の名の通り、石川県・金沢地方で作られる友禅染です。京友禅とは打って変わって、武家好みの落ち着いた風合いで金や刺繍は使われず、柄も抽象的なものではなく写実的な花鳥などが多く見られます。